「まさに楽園」と称するハワイの魅力をさらに語る 高城沙耶さんインタビューvol.2
ハワイ独特のギターチューニング奏法、スラッキーギター界の若き名手「マカナ」。彼の音楽には聴く人の心の琴線に触れ、解放する光のシグナルが隠されている。透明感のあるボイス、甘いマスクからハワイでも注目のアーティスト。素朴で心地よいインストゥルメンタルも秀逸。すでに16年のキャリアを誇り、ハワイアンをベースにした幅広い音楽性から生み出されるサウンドには底知れぬ可能性が秘められている。マカナの魅力に迫ってみた。
9歳で初めてウクレレを手にし、その後ギターに持ち替えて13歳でサニー・チリングワースに師事。スラッキーギターのアートフォームをベースに、新時代の感性でクリエイティブな作品を発表。20代前半で偉才が認められ、WOMADなど世界の音楽祭に出演。心と魂から流れ出す自由な音楽はギフト。マカナとはハワイ語で「贈り物」を意味する。インスピレーションあふれるライブは必見。日本ではビクターエンタテインメントと契約。オアフ島生まれ。ホノルル在住。28歳。
ホームページ:http://makanalive.com
スラッキーギター(スラックキーギター):
スラッキーとは「スラック・キー(弦を緩める)」という意味。メロディーやコード、ベースラインを同時に弾くので、数人が演奏しているように聴こえ、緩んだ弦の和音が椰子の葉音や波の音のようなきらめきを描き出す。

■弦を緩めてチューニングをする時は魔法のドアが開くよう---------------------
マタタビ:「スラッキー・ミュージック」とはどんな音楽なのですか?

マカナ:
スラッキーはギター1本で演奏しているのに、まるで多くのプレイヤーが一斉に弾いているような幻想を作り出せる。予めギターの弦に全く触れずに弾いた時、すでにコードになっているような美しいオープン・チューニングにするのでコードを押さえる必要はないんだ。親指でベースラインを奏で、他の指でメロディーとリズムを乗せていく。たとえNYで聴いていたとしても、まるでハワイにいるような気分にさせてしまう、聴く人にハワイのエッセンスやバイブレーションを運ぶ音楽なんだ。弦を緩めてチューニングをする時は、まるで魔法のドアが開くようだよ。

マタタビ:マカナが海辺でギターを弾くのにじっと耳を傾けていると、スラッキーは波や風の音に自然に溶け込むものなのだなぁと感心しました。

マカナ:
そう、スラッキーは本当に美しい音楽なんだよ。僕はスラッキーのジミ・ヘンだけれどね(笑)。

■日本のファンはとても深いレベルで音楽を聴いてくれる----------------------
マタタビ:新しいアルバムが日本で先行発売されましたね?

マカナ:
夏にまず日本で出て、アメリカでは11月7日にリリースされる予定。オンラインで買えるようになるよ。デジタルリリースもされるんだ。

マタタビ:日本での反応はいかがですか?

マカナ:
とてもいいね。春に日本縦断プロモーションをして、とても上手くいったよ。みんなが応援してくれていると感じたので、心から感謝している。

マタタビ:日本のファンの印象は?

マカナ:
日本のリスナーはね、驚いたことに同じ言葉を話していないのに、僕のアートにとても深い理解があるんだ。日本の人たちの感性は西洋人のように「イェーイ!」というノリはないけれど、もっと深い何か、とても敬意のある反応をしてくれる。「この曲とても良かったわ」というのではなくて、「何て素晴らしい音楽をやっているの。私の人生観が変わったわ!」というような反応をしてくれる。日本人はとても深いレベルで音楽を聴いてくれているね。

マタタビ:毎回違うユニークなアルバムを発表されていますが、今回の新しいアルバムは?

マカナ:
大まかにいうと「Letting go(手放していく)」ということを伝えたいんだ。人生のどんなコンセプトも良い意味で手放していくということ。すでにヘルシーではない古い何か、そんなすべてを手放す時、君の中に他の可能性のスペースを作ることになると思う。僕はいつも心を開いて耳を傾け、自分をこの状態に委ねていたいんだ。
■ハワイの自然の中で自分の本質に触れるのが好き-------------------------
マタタビ:マカナはハワイ生まれ、ハワイ育ちですね?
マカナ:
オアフで生まれ育ったよ。小さい頃に住んでいたのはパールシティ。

マタタビ:普段はどんなことをするのが好きですか?

マカナ:
海が大好き。何もかも忘れて海にいるのが好きなんだ。渓谷に行くのも大好き。渓谷深くにこもっていると、まるでお母さんのお腹の中にいるみたいで心が落ち着く。山のてっぺんにハイキングに行くのも好き。ここにはすべてがあり、多彩な自然が全く違ったフィーリングを与えてくれる。ここはまだ古代のエネルギーが色濃く残っている秘境なんだ。

マタタビ:ハワイへ旅行で来る人に、何かメッセージはありますか?

マカナ:
買い物に行かないで、もっと自然を味わってほしい!(笑)。ハワイでは、自然と一体になれるフィーリングこそが大事なものだと思うんだ。だから、僕はここに住んでいる。何が自分に平和な心や喜び、幸せをもたらしてくれるかということを知っているから。サーフィンをしたり、ハイキングをしたり、ビーチで夕陽を見たり。ハワイではそんな生き方が可能なんだ。

マタタビ:ハワイのカルチャーも奥深いと思いますが?
マカナ:
機会があれば、学んでみるのは素晴らしい体験だと思うよ。とても全体性が見えている文化なんだ。例えば、ハワイアンは土地が僕らを所有しているという見方をする。すべての場所ではないけれど、古代のエネルギーが残っている、ハワイにはそんな部分がある。だから、敬意を払って古代のハワイ文化や習慣を学べば、石も木も波も風も森羅万象すべてが生きていると感じながら世界を見ている、ということが分かると思うよ。僕は人間が自然の流れに逆らって生きることは危険なことだと考えているんだ。
■「アロハ」の本当の意味-----------------------------------------------
マタタビ:マカナの考えるアロハとは?

マカナ:
ハワイに引っ越して来たばかりの人がよく「アロハ!」なんて簡単に言うけど、それは何の中身もない空疎な使い方。言葉というものがまるでハートから出ていない。アロハは「ハイ」「どう、元気?」というような軽い言葉じゃない。アロハは誰かと向かい合ったとき、相手に感謝し、挨拶する言葉なんだ。だから、アロハは動詞なんだよ。「誰かをアロハする」ということ。
■興味のあることを探求し人生を創っていく---------------------------------
マタタビ:今、興味を持っていることは?

マカナ:
僕がいつも興味を抱いているのは、人生を創造していくということ。好奇心が僕を運んでいってくれて、そして出会う人々と影響しあう。それがいつも自分でフォーカスしていること。でも、「今、この車が好きで・・・」とか、そういうのは僕にはないね。

マカナ:
そうだ、ねぇ知ってる、僕がもっと興味のあること?

マタタビ:何ですか?

マカナ:
探求することだよ。それから、消極的になって過去に行き詰ったりせず、またリスクを背負って生きることを恐れないようなパートナーに出会ってみたい。まだ、そんな人に出会ったことがないんだ。
■「夢」というものは叶うものだと信じている---------------------------------
マタタビ:先日、英国ロック界の重鎮といわれるエルビス・コステロのショーのオープニングで演奏されましたね?

マカナ:
あれはすごいライブだった。僕が3曲終えておじぎをしてステージを去った直後、会場のパワーシステムが「ブーン」といってダウン。真っ暗になってしまった。みんなは「マカナがやった」とか言って。本当にすごいタイミングだった。あの時、僕、マナ(パワー)を感じたよ。

マタタビ:あなたが聴衆を総立ちにさせて会場のエネルギーを全て燃焼させてしまった? ので(笑)、コステロは真っ暗な中で懐中電灯とロウソクの下、アカペラで「She」を歌ったりしていました。でも、最悪の状況を逆に利用して、どこまでもファンを楽しませるアーティストの即興性の美しさに感動しました。
他にもスティング、サンタナなど、かつてマカナにとってのヒーローだった人たちと共演していますね?

マカナ:
僕はとても恵まれていると思っている。僕って、夢見たことがすべて現実になるんだ。すべての人の「夢」というものは叶うものだと信じている。先日、僕の憧れだったグレン・フィリップスとカウアイ島で一緒にライブを行ったんだけど、その時、僕がよく昔カラオケで歌うのが大好きだった90年代の彼のビッグヒットを、ステージで彼と一緒に歌ったんだ。そのことを聴衆に話したら大うけ。本当にハッピーでパワフルな感覚を味わったんだ。僕らは一人ひとり夢を実現する力を持っていると思うよ。
■世界中に愛を与えたい-----------------------------------------------
マタタビ:将来の目標は何ですか?

マカナ:
バンドのツアーで世界中を周ってみたいな。本当に今の状態に感謝している。だから、世界中に愛を与えたいんだ。毎日起こることに感謝し、じっと抱きしめているような気持ちが僕にはある。たとえ仕事がストレスフルで、難しい問題が起こってもね。自分はとても恵まれていると思うよ。
■人生最大のチャレンジとゴール----------------------------------------
マカナ:
僕、引っ越すかもしれないけどね。

マタタビ:どこへですか?

マカナ:
分からないけど、たぶん数年以内に。正直いうと、たった一つの不安はハワイから離れること。ハワイという僕の家から離れることは怖い。ハワイにはとても愛着がありすぎるから。もしハワイの外に引っ越すことになったら、それが僕の人生最大のチャレンジになると思う。ただ、自分なりの哲学を違う土地でも試してみたい気持ちもあるから、一度離れてみる必要はあると思う。ハワイから離れどこか違う土地で暮らしたとしても、自分の中のハワイを失わずに幸せでいれるように。それが僕のゴールかもしれない。
■自分のハートと音楽を大切に育てていこうと思う---------------------------
マタタビ:最後にマカナの音楽について?
マカナ:
自分のキャリアに関しては急いでないんだ。なぜなら、今自分のやっていることを信じているから。着実にしっかりと根を張りながら、ゆっくり広がっていくつもり。僕は独立したアーティストなので、自分のハートと音楽を大切に育てていこうと思っている。他の人と同じ価値観を持つ必要はないと思うし、僕らアーティストは人々のための真実の声であるべきだと思う。彼らのハートのビートを刻めるように導く、ヒューマニティに関する責任があると信じているんだ。それが音楽やパフォーマンスの持つ力だと思っている。
編集後記
ある日の昼下がり、ギターを抱え、ビーチサンダルでやって来たマカナ。インタビューしながら、柔和な笑顔で語りかける言葉の中に、意志の強さと優しさを垣間見た。今、追い風を受けながら順風満帆な人生の貴重な1ページを毎日毎日刻んでいることが伺える。そう言いつつも、時折見せる天真爛漫な子供のように笑い、歌い、哲学を語ってくれた楽しいインタビュー。飾り気のないオープンさとフレンドリーさに、彼が創り出す音楽の本質を見つけた気がする貴重な時間でした。 (2006年9月)