デザインに隠された幸せのメッセージ
一度聞くと、耳から離れない優しいウクレレのメロディー。ハーブ・オオタ・ジュニアが最も得意とするハワイアン&バラードには癒しの旋律がある。いわば「アロハ・スピリットを奏でるウクレレの伝道師」。形式に捕らわれない彼の演奏は、ポップスや邦楽など幅広い分野でも才能を開花させ、ウクレレを通して様々なジャンルの音楽に新しい命を吹き込んでいる。今では彼の体の一部でもあるウクレレ。ジュニアが奏でるミュージックには、彼の人柄と魂そのものが映し出されている。常に笑顔を絶やさず、ひょうきんで、おちゃめな人柄に、いつも周りに多くの人が絶えない。ウクレレと共に歩むジュニアの夢を追ってみた。
小さい時から音楽が好きだったハーブ・オオタ・ジュニア。3歳の頃、祖母から初めてウクレレで「ハッピー・バースデー」を習う。その後、父でウクレレの神様の異名を取るオオタ・サン(ハーブ・オオタ)から指導を受け、10歳くらいで父の教室を手伝う。12歳頃にウクレレに対する興味が急激に薄れていったが、17歳の時にハワイアン・ミュージック界で最高峰のグループの一つ、マカハ・サンズの曲との出会いが転機となって、再びウクレレに全力で傾注するように。ハワイアン音楽界のグラミー賞と言われるナ・ホク・ハノハノ賞に過去4度ノミネート、ハワイ・ミュージック・アワードを2回受賞するなど、今では名実ともに認められた新世代のウクレレ・プレーヤー。ハワイを拠点に日本や米国本土にも遠征し、インストラクター、作曲家、レコーディング・アーティスト、エンターテイナー、プロデューサーとして幅広く活躍し、ジュニア独自の世界を確立している。
ホームページ:http://www.herbohtajr.com

■取り付かれたウクレレの魅力
マタタビ:ウクレレに興味を持ち始めたきっかけは?

ジュニア: 3歳のときに、父がウクレレをプレゼントしてくれたんだけど、実際は記憶にないんだよ。小さかったからね。気がついたら、ウクレレと一緒に育ってきたんだ。9歳の頃にはウクレレのテクニックを教わって、10歳くらいから父の教室を手伝って、生徒さんたちにウクレレを教えていたんだ。ウクレレを弾いて約20年になるよ。

マタタビ:ハーブ・オオタ・ジュニアは本名ですか?

ジュニア:みんなが昔からそう呼んでいたから、そうしただけだよ。

マタタビ:ウクレレに興味がなくなった時期があるそうですが、どうしてですか?

ジュニア:興味がなくなったのではなくて、ウクレレよりも他のことに興味が湧いてきたんだ。男の子なら誰もが経験するかもしれないけど、12歳の頃からスポーツをする方が楽しくなったんだ。特に、バスケットボールに夢中だったよ。まだ、父の教室を手伝ってはいたけれど、自分自身のウクレレに対する興味や練習時間はドンドン減っていったんだよ。

マタタビ:もう一度ウクレレに情熱を傾けたきっかけは?

ジュニア:17歳の時にマカハ・サンズのテープを聴いたんだ。彼らのハーモニーやアレンジメント、すべてがとても素晴らしかった。ハワイアン・ミュージックの美しさに一気に引き込まれてしまったよ。ウクレレが人々をリラックスさせ、楽しい気分にしてくれる魅力に取り付かれてしまった感じ。その時から、だんだん練習をするようになった。1日に2、3時間くらい。でも、しばらく父には内緒にしてたんだ。ウクレレを練習しないと、胸にポッカリと穴が開いた感じになりそうでね。ウクレレを練習すればするほど興味が湧いてきて、上手くなればなるほど楽しくなったんだ。その後は、もっともっと練習するようになって、ただただ音楽の世界にのめり込んでいったんだ。

マタタビ:憧れのマカハ・サンズとの共演が実現した時は?

ジュニア:以前から面識はあるし、何回か一緒に演奏させてもらっていたけど、共演はまさに「Dream Comes True(夢の実現)」だったよ。僕にウクレレの魅力を改めて教えてくれた人たちだからね。マカハ・サンズの演奏は本当に素晴らしいんだ。彼らのことを、もっと沢山の人に知ってもらいたいよ。

■ウクレレ演奏者としての扉を開いてくれた父
マタタビ:小さい頃、父親はどんな存在でしたか?

ジュニア: 父は厳しかったけど、公平な人なんだ。父は僕のためにアドバイスはしてくれるけど、「あーしろとか、こーしろ」とか、命令されたことは一度もなかった。彼は僕にいつも選択肢を与えてくれた。ウクレレについても、僕に一度も強制したことはないんだ。僕自身が、自分でウクレレを弾き続けることを決めたんだ。むしろ、父は僕にウクレレの道を歩んでほしくなかったように思う。なぜなら、彼は音楽家としての苦難を乗り越えてきた人だったから、同じ思いをしてほしくなかったんじゃないのかな。僕が本当にやりたいこと、なりたいもの、すべてを温かく見守ってくれていた。

マタタビ:今、あなたにとって父親はどんな存在ですか?

ジュニア: 今も昔も、父に対する気持ちは変わらない。父親として、音楽家として、とても尊敬している。父が、僕にウクレレ演奏者としての扉を開いてくれたんだ。その扉を自らの意思で開けた後、ウクレレ演奏者としてやって行けるかどうかは、すべて僕次第。そんな僕を、父は今も変わらず応援してくれている。

マタタビ:母親は、あなたにとってどんな存在でしたか?

ジュニア:思いやりのある優しい母は、いつも僕にたくさんの愛情を注いでくれたよ。父と同様、いつでも僕を応援してくれている。そんな母が2年前、僕に初めて願い事をしたんだ。母は僕に「冬のソナタの主題歌/最初から今までを演奏してほしい」って。すぐに、練習して母に聞かせたら、とても喜んでくれたよ。

マタタビ:父親から教わったことで印象に残ったことは?

ジュニア: 9歳からテクニックを習い始めたんだけど、当時は早く弾くことばかり躍起になっていた時期があったんだ。そしたら父が「スピードがすべてじゃない」って言ったんだ。「音楽を聴いてもらうことを、もっと大切にしなさい」とね。ウクレレを弾いても、どんなミュージックなのか分からなかったら意味がないよね。ウクレレを演奏するのに、テクニックがすべてじゃないだ。きちんと人々に奏でるメッセージが届くように演奏しなくちゃね。

■音楽はなくてはならないもの
マタタビ:ウクレレを弾くことでの喜びは?

ジュニア: ウクレレを演奏するときは、いつもハッピーだよ。もうウクレレの道に進んで20年くらい経つけれど、ウクレレに対する情熱は変わらないし、今でも多くの人々に聞いてもらえることを、とても光栄で嬉しく思うよ。僕はなんてラッキーなんだってね。

マタタビ:ウクレレを弾くことに対して苦難や失望を経験したことは?

ジュニア: 特にないよ。明日は明日の風が吹く。ウクレレを伝えたい、楽しんで演奏したい、ただそれだけなんだ。でも唯一、緊張したのが、父が僕のライブを初めて見に来たときかな。父にウクレレの練習を再開したことを内緒にしていたでしょ。その後、バンドを組んで、カハラモールで演奏したんだ。あの時、父の前で演奏した緊張感は今でも忘れられないよ。

マタタビ:今、使っているウクレレは何ですか? 何か特別な思い入れは?

ジュニア: ウクレレは8個か9個くらい持っているけど、今使っているのは(ハワイのウクレレを代表する)「コアロハ」のオーダーメイドだよ。

マタタビ:指に保険とかかけていますか?

ジュニア: 保険はないよ。ハハハ(笑)。

マタタビ:好きな曲調は?

ジュニア:僕の心をグッとつかむ曲だよ。「弾きたい」って思ったものは何でも弾くよ。音楽に境界線なんてないから、どんなジャンルでも、素晴らしいミュージックをウクレレでて奏でてみたいんだ。

マタタビ:演奏中は何を考えたり、感じたりしますか?

ジュニア:多くの人々の前で演奏する時は、緊張やプレッシャーはつきものだけど、音楽家として、それにどう向き合うかだよね。大切なのは自分がウクレレを演奏することを心から楽しむこと。演奏しているとき、次は何を弾こうかと、アレンジメントを考えるのが楽しいんだ。心から楽しまなくちゃ、良い音楽は生まれないし、聞いてくれる人にも伝わらないからね。

マタタビ:もしウクレレを演奏していなければ、何になりたかったですか?

ジュニア:もちろん、ミュージシャンだね。僕にとって、音楽はなくてはならないものだから。何らかの形で音楽に携わっていると思うよ。

■ウクレレの輪を広げたい
マタタビ:日本にはよく演奏に行くのですか?

ジュニア:毎年ツアーに行くよ。この間は、仙台と福岡に行って来たんだ。新しい人々との出会いや素晴らしい経験もあり、とても楽しかったよ。

マタタビ:日本のミュージシャンで友達は?

ジュニア:いるよ。サザン・オールスターズの関口さんやドリフターズの高木ブーさん。夏川りみさんやビギンとか、ボサノバの小野リサさんとも交友があるよ。

マタタビ:コンサートは年に何回くらい?

ジュニア:4、5回だよ。

マタタビ:頻繁にコンサートを行うのはなぜですか?

ジュニア:
一緒にウクレレの素晴らしさを分かち合いたいんだ。僕にとって、ツアーはとても大切。いろいろな人々に会って、ウクレレの輪をドンドン広げていきたいな。

■ウクレレの良さを多くの人たちに伝えることが使命
マタタビ:ウクレレを通して伝えたいことは?

ジュニア: 感謝の気持ちが一番だよ。いつも僕をサポートしてくれる皆さんに、何よりもありがとうを伝えたい。また、ウクレレによって、みんなの大切な人に感謝するって気持ちを伝えたいよ。

マタタビ:ウクレレを弾くことは、あなたにとってどのような価値があるのですか?

ジュニア: 僕はウクレレを改革したり、トップになろうなんて全く思ってないよ。別に、他のウクレレ演奏者を僕のライバルと考えているわけでもないし。音楽を愛するすべての人たちを尊敬している。ウクレレを開拓した世代、今の世代、彼らが何を成し遂げたか? これから出てくる、新しいウクレレ演奏者の世代にウクレレの歴史を学んで欲しい。僕の使命はウクレレの良さを多くの人たちに伝えることだと思っている。だから、ウクレレを弾くすべての人たちに感謝し、尊敬しているんだ。

マタタビ:ボランティアで演奏しているそうですね?

ジュニア: ハワイカイにあるココマリーナ・ショッピングセンターのバービーズで毎月1度、ボランティアで演奏していることだね。そこのオーナーが地域貢献をしているので、彼のために何かしたかったんだ。社会に貢献できることを嬉しく思うよ。

マタタビ:将来の夢は?

ジュニア: ハワイの美しい音楽や文化、そしてウクレレの良さをできるだけ多くの人に知って、感じてもらうこと。まずはアジア。日本には頻繁にライブに行っているから、これからは中国や韓国の人にもウクレレの良さを知ってもらいたいな。いずれは世界で演奏して、できるだけ沢山の人にウクレレを知ってもらいたい。

マタタビ:実現のために何かしていることは?

ジュニア: 今後もウクレレを演奏して、多くの子供たちにも教え続けたい。そして、みんなと音楽を分かち合い、次世代のウクレレ演奏者の指導者になりたいと常々思っています。

 
編集後記
足でリズムを刻みながら、楽しそうに演奏する姿に、こちらまで笑顔がこぼれました。彼のウクレレに対する想いが曲と一体化して聴衆に届けられ、幸福な気持ちにさせてくれます。一度聞けば、虜(とりこ)になること間違いなし! すべてのミューシャンを尊敬し、音楽を愛すというジュニア。気取らず、周囲に対する気配りを忘れない人柄は好感を持てます。ウクレレを世界中に広めたいという夢は、彼の情熱や周りの人たちの支えを受けて、着実に前進しています。 (2007年4月)